【保存版】蓄電池の容量は3つの選び方で決まる!容量計算から用途別の選び方まで解説
蓄電池の容量がどれくらい必要なのか、お悩みではないでしょうか?
実は、蓄電池の容量の選び方は簡単ではありません。
太陽光発電はなるべく大きな容量にするのが正解ですが、蓄電池の容量はそうではないからです。
また、太陽光発電システムのkW数と同じ分の容量で考えてしまうのはよくある間違いです。
蓄電池の容量を選ぶうえで、事前に知らなければならない知識も合わせて、代表的な選び方のご紹介と、実際のケースでの検証をしてみたいと思います。
蓄電池容量の選び方は3通り
蓄電池の容量は、その容量が大きければ大きいほど良いのは間違いありませんが、そのぶん比例して金額が高くなるため、自分にとって最適な容量がどのくらいなのかを考えなければいけません。
今回は蓄電池の容量の3つの選び方をご紹介します。
- 太陽光発電の設置容量との関係からの選び方
→太陽光発電システムの1日当たりの平均発電量から算出する - 停電時にどのような暮らしをしたいかという点からの選び方
→停電時にどれだけの電力を使用するかを算出する - 深夜電力の有効利用という点からの選び方
→朝晩の消費量とのバランスから算出する
上記3つの視点で解説いたします。
また、蓄電池メーカーの選び方やメーカーごとの相場価格の記事もございますのであわせて読んでみてください。
蓄電池の容量を選ぶ前に知っておくべきこと
蓄電池の容量の選び方をご説明する前に、「実効容量」や「kWh」など、そもそも知っておくべきことをお伝えします。
定格容量と実効容量のちがい
蓄電池の容量を考えるにあたって、まずは定格容量と実効容量のちがいを知っていなければなりません。
- 定格容量:規定された条件下で蓄えられる電気量。
- 実効容量:実際に使用できる電気量。
下はオムロンの蓄電池の記載ですが、蓄電池容量の項目にカッコ書きで実効容量の記載があります。
言葉の通りで実際に使用できる容量が、実効容量の方になります。
メーカーによっては実効容量の記載はカタログなどにない場合も多いです。
形式 | KP-BU65B-S | KP-BU98B-S |
---|---|---|
蓄電容量 | 6.5kWh(実効容量:5.9kWh) | 9.8kWh(実効容量:8.8kWh) |
実効容量の計算式は日本電気工業会規格として以下の通り決まっています。
kWとkWhのちがい
蓄電池の容量の前に、太陽光発電の容量を表すkWと、蓄電池の容量を表すkWhは違うものですので、まずはこの理解をしなければなりません。
- kW(キロワット):瞬間の電力の単位。
- kWh(キロワットアワー):太陽光発電システムを1時間(h)発電し続けた時の発電量。
kWは電力の単位ですが、時間の概念がなく、あくまで瞬間値です。
kWhは、5kWの太陽光発電システムが1時間(1h)発電し続けた時の発電量が5kWhとなります。
時間の概念が入ったkWhを容量表記に使っているのが蓄電池で、時間の概念がないkWを使っているのが太陽光発電です。
それでは次の項目から、蓄電池の容量の3つ選び方に関して詳しく解説していきます。
太陽光発電の設置容量との関係からの選び方
太陽光発電システムのkW数と蓄電池容量の関係の観点から、蓄電池の容量を選んでいきます。
先ほども言いましたが、kW数とkWhは異なりますので、単純に太陽光発電のkW数と同じ数値の蓄電池容量(kWh)を選ばないよう注意してください。
太陽光発電について詳しく知りたい方は下記記事を読んでみてください。
太陽光発電のkW数と蓄電池が満タンになる時間の関係
5kWの太陽光発電システムが、5kWhの蓄電池を満タンにするのに要する時間は1時間なのか?というと、そうではありません。
なぜなら太陽光発電のkW表記は、上記の蓄電池の定格容量のようなもので、実効出力(実際に使える容量)ではないからです。
実効出力は屋根の向きや角度、季節、時間帯、パネルの性能によって当然変化するのですが、晴天時で60%から80%くらいになります。
5kWの太陽光発電システムなら、3kW~4kWとなり、仮に平均して晴天時は3.5kWの発電であれば1時間で3.5kWh発電することになります。
つまり5kWhの蓄電池を満タンに充電するのにかかる時間は、約1時間25分ほどという事になります。
蓄電池の容量はどの位が適正か?
よくいただく質問に「太陽光発電が4kWなのですが、蓄電池の容量はどのくらいのものを設置したら良いのでしょうか?」というものがあります。
例えば、4kWの太陽光発電システムの年間想定発電量を4,400kWhとした場合に1日あたり平均12kWh。
このときに日中の平均自家消費量が3kWhだった場合、9kWhが余ります。
これをすべて売電せずに蓄電に回したいとなれば9kWhの容量の蓄電池が必要になります。
しかし単純計算であればこれでよいのですが、当然ながら太陽光発電の発電量は天候に左右されます。
雨や曇りの日は数kWhと減りますし、逆に春夏の晴天時では1日の合発電量は25kWhを超えることが予想されます。
太陽光で発電した電気を一切売電に回したくないということであれば、この最大発電に合わせた容量の蓄電池を用意する必要がありますが、25kWhの蓄電池は現実的ではありません。
(現在家庭用蓄電池の一番大きな容量の蓄電池は16.6kWhです)
時期や天候によって発電量は異なりますし、そもそも発電した電気をどのくらい売電に回してどのくらい蓄電するかを考えておく必要があります。
太陽光発電の発電量のみから算出するのは難しいので、他の2つの視点もあわせて読んでみてください。
停電時にどのような暮らしをしたいかという点からの選び方
停電時にどのくらい電気が必要になるのか、という観点から蓄電池容量を算出していきます。
電化製品の消費電力量と蓄電池容量の関係を見ていきましょう。
停電時にどのように過ごすか
蓄電池の容量の選び方のもう1つは非常時に停電した際、どこまで備えるか?どのように過ごしたいか?という考え方です。
停電時になるべく普段と変わらない生活を送りたいのか、必要最低限で良いのか、エアコンを使いたいのか、照明やテレビはどうするか等です。
各電化製品によって必要な電力量が変わりますのでなるべく細かく想定しておく必要があります。
次の項目では各電化製品の詳細を比較します。
電化製品ごとの消費電力量
電化製品ごとの1時間あたりの消費電力量を一覧でご紹介します。
各メーカー、商品の性能違いによって変わりますのであくまで目安としてお考え下さい。
冷蔵庫 | 0.1kWh |
---|---|
一部屋の照明 | 0.05kWh |
テレビ | 0.1~0.2kWh |
スマホ充電 | 0.01kWh |
パソコン | 0.1~0.2kWh |
電子レンジ | 1~1.5kWh |
電気ケトル | 1.5kWh |
エアコン | 0.5kWh~1kWh |
定格消費電力と消費電力量
上の表の消費電力量はわかりやすいように1時間あたりのものにしています。
太陽光発電のkWとkWhの考え方と同じで、定格消費電力1kWの電化製品を1時間(1h)使い続けた時の消費電力量が1kWhとなります。
スイッチを入れたり消したりをしない冷蔵庫などを考える際には適していますが、例えば電気ケトルはお湯を沸かす間だけしか使わないので1時間も使うことがありません。
どのくらいの量を沸かすかにもよりますが、せいぜい数分です。
停電時に1日2回お湯を沸かすとして、最近の電気ケトルは優秀で1リットルの水も5分で沸かしてしまいます。
そうなると定格消費電力1.5kWh(1500W)を5分×2回で計10分しか使いませんので、実際の使用する消費電力量は0.25kWhとなります。
蓄電池の容量はどのくらい必要か
例えば、エアコン8時間稼働(6kWh)、電気ケトル1日2回(0.25kWh)、テレビ12時間視聴(1.8kWh)、照明12時間稼働(0.6kWh)、スマホ満充電2回(0.2kWh)、冷蔵庫24時間稼働(2.4kWh)とすると全部合わせて、必要な蓄電池の容量は11.25kWhとなります。
エアコンの消費電力量がいかに大きいかがよくわかると思います。
照明もLEDであればさらに消費電力量は小さくなりますし、各ご家庭の電化製品で計算してみるとだいぶ変わってくると思います。
蓄電池の容量を決める際は、非常の際の停電時の備えをよく考えて頂き、まずはエアコンを利用したいかどうかを最初に決める必要があります。
上の例でもエアコンは使用しないとなると6kWhと大幅に少なくなり、検討する蓄電池の容量が大きく変わるからです。
深夜電力の有効利用という点からの選び方
蓄電池は貯めた電気を朝晩に使う、停電時に備える以外に、安い深夜電力を有効利用するという使い方があります。
例えば、東京電力のオール電化向け電気料金プラン「スマートライフプラン」の場合、深夜1時~朝6時までの買電単価が28.06円と安く、それ以外の時間帯が35.96円となっています。
28.06円の時間帯に蓄電池に電気をため、それ以外の時間帯で放電して利用した場合にはその差額7.9円分がお得になります。
この時に太陽光発電を設置していない方であれば関係ありませんが、太陽光発電システムが設置済みの方で固定買取期間中の場合、太陽光発電が日中稼働している時間帯は太陽光が発電した電気を使います。
ですので、蓄電池から放電するのは、太陽光発電が稼働を始める朝6時から太陽光発電が稼働を始めるまでの間と、夕方日が暮れて、太陽光発電が発電を止めた後の時間帯に放電することになります。
既にオール電化の方などは、時間帯別電気料金プランになっているはずですので、電気代の明細を見れば朝晩の時間帯でどのくらい普段電気を消費しているかがわかると思いますし、太陽光発電のモニターで1日あたりの使用量も確認できます。
検証:3.3kWの太陽光発電システムの場合
蓄電池の容量を選ぶにあたって、それでは実際に弊社ソーラーアドバイザーの中村雄介の自宅の場合で検証してみたいと思います。
太陽光発電の設置容量との関係から
我が家の太陽光発電の設置容量との関係から、蓄電の容量を算出します。
条件:3.3kWのカナディアン・ソーラーの太陽光発電システムで南西向きの5寸勾配屋根。
我が家の状況
共働きで子供たちも日中は学校に行っていて、太陽光発電が発電している時間帯はほとんど家に人がいませんので自家消費量は考慮しなくて良いです。
これらの情報から実効容量がおおよそ90%になることを考えると、蓄電池の容量は12kWhであればかなり有効的に蓄電できることがわかります。
停電時の暮らし方から
停電時にどの電力を使うかという点から、蓄電池の容量を算出します。
我が家はオール電化住宅ですので、料理はIHクッキングヒーター、給湯はエコキュートです。
200Vエアコンもあれば、100V対応エアコンもあります。
しかし停電時は必要最小限の生活で良いと考えており、非常用の卓上ガスコンロも備えておりますので、IHは利用しません。
必須は冷蔵庫、リビング照明、スマホ充電用にリビングのコンセント、情報収集用のテレビ(こちらもリビングにあり)と考えています。
そうなると冷蔵庫が0.1kWh、照明で0.05kWh、テレビが0.2kWh、スマホ0.01kWhとなり、1時間あたり0.36kWhとなります。
1時間あたりに必要な電気
冷蔵庫0.1kWh+照明0.05kWh+テレビ0.2kWh+スマホ0.01kWh=0.36kWh
1日あたりで考えると、冷蔵庫は24時間稼働、照明は昼間は使わず夜の寝るまでの間なので約6時間、テレビは起きている間はつけていると考えて17時間、スマホは夫婦2台分を満充電させるのに計4時間、として24時間あたりの必要電力量を計算すると6.14kWhとなります。
1日あたりに必要な電気
冷蔵庫0.1kWh×24時間+照明0.05kWh×6時間+テレビ0.2kWh×17時間+スマホ0.01kWh×4時間=6.14kWh
実効容量が90%と仮定すると、蓄電池の容量は6.8kWh以上のものを購入しておけば十分であるとわかります。
深夜電力の有効利用
朝晩の消費のバランスから、蓄電池の容量を算出していきます。
夏と冬のエアコンを稼働させないといけない時期であれば、朝はともかく夜はリビングと、中学生の長女の子供部屋のエアコンが同時に稼働します。
これが18時から22時までで約6kWh消費します。
そして大きいところで料理の際のIHクッキングヒーターの利用です。
三口のIHですが、30分間どれかが使われていると考えるとIHだけで1kWhは使います。
照明や冷蔵庫など諸々でおよそ2kWhと考えられますので夏冬であれば9kWh。
実効容量を考慮して蓄電池の容量は10kWhが妥当という事になります。
しかしエアコンを利用しない春秋の時期は、4kWh弱で良いという事になります。
結局、蓄電池の容量はいくつにすべきか?
あくまで我が家の場合(3.3kWのカナディアン・ソーラーの太陽光発電システム)ではありますが、まとめると下記になります。
- 太陽光発電のkWからの関係では、12kWh
- 停電時利用からは、6.8kWh以上
- 深夜電力の有効利用からは、4kWh弱~10kWh
これらの考察から、蓄電池の容量は当然ながら価格とのバランスではありますが、停電時利用の数値は最低限の値で、そこから削るのは考えにくいです。
ですので、我が家では6.8kWh前後の容量の蓄電池を検討すると思います。
あくまでも我が家の場合ですので、ご家庭によって電力の使用状況などに応じて検討してみてください。
蓄電池の容量が決まってから次に見ておくべきところは?
ここからは、プラスアルファで蓄電池を選ぶ際に見ておくべきところをお話します。
蓄電池の容量が決まったとしても、蓄電池によっては停電時に使える電気が限られる場合もございます。
くわしくは、下記を読んでみてください。
蓄電池容量と200V電源
蓄電池の容量と200V電源に関してお話します。
上の我が家の検証では、IHを使う想定をしておりませんでしたが、リビングの大きめのエアコンやIHなどは通常の100V電源ではなく200V電源を利用しています。
蓄電池でこの200V電源の電化製品を動かす場合は、そもそも200V電源の電化製品が利用可能な蓄電池かどうかが関係します。
ですので、検討中の蓄電池が100V電源のみ対応なのか、200V電源対応可能なのかを確認するようにしてください。
蓄電池容量と停電時出力
蓄電池の容量がいくら大きくても、停電時に一度に使える電力量には限度があります。
例えば、現在家庭用蓄電池で一番大きな容量のニチコンの16.6kWhの蓄電池は、停電時に同時に使える電気は2.0kWhです。
理由は、停電時に使える電気が限られる特定負荷型という蓄電池だからです。
この停電時出力は各蓄電池によって変わってきますので、特にエアコン使用を考えていて、かつ特定負荷型の蓄電池を考えている方は、蓄電池の容量だけでなく停電時出力もしっかりとチェックするようにしてください。
ただし、全負荷型の蓄電池を検討している方は、停電時にすべての電力が使えますのでこの点は関係ありません。
まとめ
蓄電池容量の目安はお分かりいただけたでしょうか。
単純に、設置している太陽光発電システムが4kWだから蓄電池容量も4kWhでOKというわけではありません。
- 太陽光発電の設置容量との関係からの選び方
- 停電時にどのような暮らしをしたいかという点からの選び方
- 深夜電力の有効利用という点からの選び方
上記のように、太陽光発電システムの発電量や実際に使える実効容量、停電時にどれだけ使用するか、朝晩の電気消費量とのバランス、などの選び方をバランスよく考えて蓄電池容量を検討するのが一番よい方法です。
ただ、バランスよくと言ってもご自身で計算して選び出すのは難しいと思います。
蓄電池のメーカーランキングもございますので、参考程度にチェックしてみてください。
ソーラーパートナーズでは、太陽光発電と蓄電池の専門アドバイザーがお客様のニーズにピッタリの蓄電池容量のご相談を承っております。
蓄電池容量の目安に関して気になるかたは、お気軽にお問い合わせください。