【2024年最新】V2Hだけでは不十分?V2Hとトライブリッドを徹底比較!
近年のEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)の普及に伴い、V2H(Vehicle to Home)を検討している方が増えています。
数年前までニチコンと三菱しか出していなかったV2Hも、今では色んな蓄電池メーカーが自社の蓄電池と連携できるV2Hを次々と発表し、トライブリッド(太陽光発電、蓄電池、V2Hを連携させるシステムで、一般的には蓄電池とV2Hがセットになった商品)のラインナップが拡充されました。
そんな業界の状況をよそに、EVやPHEVを持っている人や近い将来検討している人から、よくもらう相談があります。それは「蓄電池を入れずにV2Hだけではダメなんですか?」というものです。
まず前提として、蓄電池とV2Hは違う役割を持った商品です。蓄電池は家の電気を蓄えておくものであるのに対し、V2HはEVやPHEVの電気を家に放電するためのものです。
では、なぜ蓄電池が必要かどうか質問を受けるかというと、EVやPHEVを蓄電池のように使うことで蓄電池を設置せずに済むのではないかと考えられるからです。
この相談への答えは、たいていの場合「EVやPHEVをどのように使うのか次第」というありきたりなものになってしまいます。
しかし、今回は条件を絞ってた上で、あえてV2Hとトライブリッドを徹底比較してみたいと思います。
今回こちらの記事では、現在発表されている最新情報を基に、下記について解説していきます。
・V2Hとトライブリッドの性能比較
・V2Hとトライブリッドの価格と補助金
・ライフスタイルごとにどちらがお勧めか
※補足:最近のトライブリッドシステムは、先にV2Hだけ(もしくは蓄電池だけ)を設置し、後から蓄電池を追加設置(もしくはV2Hを設置)することを認めているメーカーも多いようです(ニチコン、シャープなど)。ただし、メーカーによっては最初にV2Hもしくは蓄電池を設置してから数年以内に追加設置をしないと保証が出ないメーカーもあるため注意が必要です。
家庭用(定置)蓄電池とは?
まずは、今回必要性を問われている蓄電池について説明します。蓄電池は読んで字のごとく、電気を蓄えておくためのものです。しかし、ひとことに蓄電池と言ってもスマートフォンのバッテリー、ポータブル電源など様々なものがあります。今回はV2Hとセットにするかどうかなので家庭用蓄電池の紹介をさせていただきます。
家庭用蓄電池は、一般的に太陽光発電と組み合わせて、停電対策や電気代削減のために導入されることがほとんどです。ためることができる電気の容量は、大体4kWh~16kWhの間でラインナップが用意されています。直近一年の平均容量は10.01kWhで、一番人気の商品はシャープの9.5kWhです。数年前までは6kWh前後が平均だったので、大容量の人気が高まっています。
また、家庭用蓄電池には全負荷型と特定負荷型があります。全負荷型は停電時にも家全体の照明やコンセントなどが使えるのに対し、特定負荷型はあらかじめ決めておいたひと部屋(リビングなど)でしか電気を使うことができません。現在では全負荷型が圧倒的に人気です。大容量の蓄電池が人気になった理由も、全負荷型が主流になったため、電力消費に見合う容量が求められるようになったことが一因です。
メーカー | シャープ | 長州産業 | ニチコン |
---|---|---|---|
製品 | |||
型名 | JH-WB2021 | CB-LMP98A | ESS-T3L1 |
タイプ | ハイブリッド型 | 単機能型 ハイブリッド型 |
ハイブリッド型 |
停電時利用 | 特定/全負荷型 | 特定/全負荷型 | 全負荷型 |
蓄電容量 | 9.5kWh | 9.8kWh | 9.9kWh |
上位3機種のうち、長州産業以外はV2Hを追加してトライブリッド蓄電システムに変更することが可能です。
メーカーごとの具体的な蓄電池のラインナップに関して詳しく知りたい方は下記の記事をご覧ください。
V2H(Vehicle to Home)とは?
EVやPHEVを購入するとなった場合、自宅にコンセントタイプやスタンドタイプの充電設備を付ける方も多いと思います。V2Hもそのような充電設備のひとつですが、他の充電設備とは異なりEVやPHEVから家に電気を供給することができる機能を備えています。
V2H自体に電気を貯める機能はありません。しかし、EVやPHEVを蓄電池本体のように使うことで蓄電池システムのような役割を持たせることができます。
また、V2Hにも蓄電池と同じように特定負荷型と全負荷型があります。停電時にひと部屋だけ電気が使えればいいのか、全部屋使えないと困るのか想像してから商品を選びましょう。
さらに、V2Hは系統連系型と、非系統連系型という2つに分類されます。
違いは、家に流す電気をひとつに絞るか、絞らないかです。家に電気を供給する際、系統連系型は電力会社から購入した電気、太陽光で発電した電気、V2HでEVやPHEVから家に流した電気を同時に使うことができるのに対し、非系統連系型は常にどれかひとつの方法でしか家に電気を供給することができません。
V2Hを選ぶときに注意する点は、非系統連系型は機能が限定されるため安い価格で導入することができますが、停電時に太陽光で発電した電気をEVやPHEVにためることができないということです。容量が大きいEVであれば太陽光からの充電なしでも2日分の電気を供給することもできますが、停電が長期に渡った場合、太陽光発電もEVもあるのに停電時に使えないという状況が起こりえるので注意が必要です。
【V2Hとトライブリッド】比較のポイント
比較する上での条件は、EVやPHEVを持っている、もしくは近い将来検討している人で、太陽光発電が既に設置されている、もしくは一緒に付ける予定がある状況とさせていただきます。
2024年時点で、トライブリッドにはせずにV2Hだけを導入してもいいのか下記の3つの視点から比較してみます。
- 1,性能と目的
- 2,価格と補助金
- 3,ライフスタイル
【V2Hとトライブリッド】比較のポイント
1,V2Hとトライブリッドの性能と目的
蓄電池を入れずにV2Hだけを導入してもいいのかというコンセプトの比較なので、まずは蓄電能力を比較してみます。
家庭用蓄電池は4kWh~16kWh程度の容量を持ったものが一般的です。
メーカー | 型番 | 容量 |
---|---|---|
シャープ | JH-WB1621 | 4.2kWh |
長州産業 | CB-LMP98A | 9.8kWh |
ニチコン | ESS-U4X1 | 16.6kWh |
対してV2Hは、それ自体に蓄電することができないので、接続するEVやPHEVの容量に依存します。
PHEVの場合8.8kWh~28.6kWhと容量が幅広く、EVの場合20kWh~107kWhと更に大きな差があります。
メーカー | 車名 | 容量 |
---|---|---|
トヨタ自動車 | プリウスPHV | 8.8kWh |
三菱自動車 | エクリプスクロス | 13.8kWh |
メルセデスベンツ | S 580 e 4MATIC long | 28.6kWh |
メーカー | 車名 | 容量 |
---|---|---|
日産自動車 | リーフe+ | 24kWh |
BYD Auto | BYD ATTO 3 | 58.56kWh |
SUBARU | SOLTERRA | 71.4kWh |
一戸建ての電気使用量が1日あたり11kWh~14kWhです。太陽光で昼間に発電することができれば、夕方から翌朝までの電気使用量が7.7kWh~9.8kWhとなるため、普段使いを考えるなら大体10kWh前後の蓄電性能があれば十分です。
ただ、非常時に電源を使うのであれば、もう少し余裕が欲しいという方もいると思います。例えば、停電が丸二日間続き天気も悪い状況を想定すると、単純計算で22kWh~28kWh、非常時なので電気の使用を控えて2割減としても17kWh~22kWh程度必要になってきます。
そのため、PHEVを考えている方は車の容量次第で蓄電池を付けて余裕を持たせておく方が良いかもしれません。一方でEVを想定している方は、容量だけ考えるなら非常時を想定しても蓄電池は必要なさそうです。
※補足:今後EVやPHEVの容量が大きくお手頃価格になる可能性を考えて、蓄電池の容量を小さめにする方もいらっしゃいます。その考え方に問題ありませんが、EVやPHEVの性能は容量を大きくするより、充電速度を速くする方向に進化しています。蓄電池の容量は現在乗っているEVやPHEVを基準に検討する方が主流なので検討の際は注意が必要です。
【V2Hとトライブリッド】比較のポイント
2,V2Hとトライブリッドの価格と補助金
次に価格の面から比較したいと思います。
2024年現在、V2Hもトライブリッドも一番の人気はニチコンの製品です。ニチコンはV2Hを世界で初めて作ったメーカーとして有名なメーカーで、V2Hを単体で導入する方にも、トライブリッドで導入する方にも満足のいくラインナップを取り揃えています。
V2H人気モデルと相場価格
下記はV2Hの人気商品です。最安値から高性能なまで取り揃えている「EVパワー・ステーション」というシリーズで展開しています。各モデルは、プレミアムタイプが標準、スタンダードが廉価、プレミアム+が高性能という立ち位置です。2024年3月からは小型化、高性能化した新モデルが販売開始となっているため、そちらも要注目です。
メーカー | モデル | 相場価格(本体+工事) |
---|---|---|
ニチコン | スタンダード | 100万円 |
ニチコン | プレミアム | 136万円 |
ニチコン | プレミアム+ | 209万円 |
トライブリッド蓄電システムの人気商品と相場価格
V2H蓄電池セット(トライブリッド蓄電システム)では、現在「ESS-T3シリーズ」が一番の人気商品です。ただし、ニチコンはトライブリッドシステムの商品を続々と発表してますし、他の蓄電池メーカーも負けじとトライブリッドに力を入れている状況なので、来年以降入れ替わっている可能性は十分ありそうです。
メーカー | モデル | 相場価格(本体+工事) |
---|---|---|
ニチコン | ESS-T3シリーズ (4.9kWh・セパレート3.5m) |
251万円 |
V2Hとトライブリッドで受けられる補助金
続いては2024年度にV2Hやトライブリッドで受けられる補助金について見てみたいと思います。
V2Hは国からの補助が手厚く、主に一般社団法人次世代自動車振興センター(以下、NEV)が執行している充電設備・V2H充放電設備・外部給電器補助金を使うのが一般的です。
昨年は、NEVの補助金が申請開始から1か月で上限に達してしまいました。申請開始前に早くから比較を進め商品と業者を決めてしまうことをお勧めします。NEVのホームページによると、申請開始は2024年6月中旬頃を予定しています。
そしてトライブリッドの場合は、国の蓄電池補助金を利用することができます。実は、昨年まではトライブリッドの場合もV2H補助金を利用するのがお得だったのですが、2024年度から補助金額が減額してしまったため、蓄電池補助金を利用するという選択肢が出てきました。
V2H補助金の上限が45万円に対して、蓄電池の補助金が60万円なので、これからトライブリッドを検討する方は蓄電池の補助金を利用する方が多くなります。
ただし、国の蓄電池の補助金はV2H補助金以上に激戦なので、予算切れとなってしまう前に検討を進めることをお勧めします。
また、都道府県や市区町村で補助金が用意されていることもあり、そちらはNEVやSIIの補助金と併用できるケースもあります。都道府県や市区町村の補助金は、地域の会社でないと申請できないという条件が付いていることも多いので、まずは地元の会社で比較検討することをお勧めします。
【V2Hとトライブリッド】比較のポイント
3,ライフスタイル
最後にライフスタイルという点から比較します。
下記が簡単にまとめたものです。
項目 | V2Hがおすすめ | トライブリッドがおすすめ |
---|---|---|
車を使う頻度 | 週末のみ、平日の短時間 | 平日から週末問わず |
外出時間 | 夕方から夜 | 朝から日中 |
この表からもわかる通り、ライフスタイルからV2Hかトライブリッドかを選ぶ上で重要なことは、車が家にない時間帯と時間の長さです。
V2Hだけの場合、次のようなことが考えられます。
- 停電対策にならないことがある
- 太陽光で発電した電気の多くが売られて経済的にお得になりづらい
- リチウムイオン電池の寿命が早まる
1,停電対策にならないことがある
充電機能だけの設備ではなく、あえてV2Hを導入したいという方のほとんどが、ある程度停電に備えることができればいいなとお考えのことと思います。
停電は天災が原因となることが多く、予知することも難しいものです。EVやPHEVで外出をしている時間が長いと、どうしても停電のタイミングと車が家にないタイミングと被ってしまうことが多くなってしまいます。
そうなると、家に家族がいる場合は停電したまま過ごさなくてはいけません。車ですぐに帰ってくるにしても家に帰るまでの距離や充電残量などを考えて思うように家で電気が使えないこともあると思います。
2,太陽光で発電した電気の多くが売られて経済的にお得になりづらい
太陽光発電は、日中に発電した電気を家の中で消費して、余った電気が自動で電力会社に売られるようになっています。現在ほとんどの方が、電力会社に売っている電気より電力会社から買っている電気の方が高い単価です。また、家の中の電気の消費量は一般的に夕方以降に多くなります。
そのため、昼間に車が家にない時は、せっかく太陽光で発電した電気の多くが売られてしまい、夕方以降に車が家に帰ってくる時はわざわざ高い電気を電力会社から買って車に充電する必要が出てきてしまいます。
3,リチウムイオン電池の寿命が早まる
上記に関連する話ですが、使い方次第ではEVやPHEVに搭載されているリチウムイオン電池の寿命を縮めてしまうことがあります。
運よく昼間に家に車があるライフスタイルだった時、昼間は太陽光から車に余った電気をためておくことができます。そして、高い電気代を払わずなるべく太陽光で発電した電気を家で使うため、夕方以降は車から家へ電気を流そうとお考えの方がいます。
その方法だと逆に車の寿命を縮めてコストパフォーマンスが悪化してしまうので注意が必要です。
EVやPHEVを購入する時、一般車と性能を比較するために「○○年もしくは走行距離○○km」という側面から確認して購入した方が多いと思います。
しかし、リチウムイオンバッテリーで動いている車なので「充放電の総数○○回」という側面も意識する必要があります。
普段使っているスマホと同じように、充電と放電を繰り返せば電池の寿命は早まってしまいます。なので、普段はなるべく家に電気を流さず、非常時のみ使うようしていただく方が高価な車の寿命を縮めずに長い期間使うことができます。
ライフスタイルまとめ
これらの問題を解決するために出てきたのがトライブリッドというシステムです。
トライブリッドにおける蓄電池は、蓄電池を単体で使う時と役割が少々異なります。停電時に車がない時に家に電気を供給してくれるだけでなく、車のリチウムイオン電池の余計な消耗を抑えて、長期間車が使えるようにサポートしてくれる役割もあります。
V2Hとトライブリッドはどっちがいいの?
色んな点から比較してきましたが、2024年現在は補助金など諸条件込みでトライブリッドが良いと判断します。
今回比較はしませんでしたが、保証年数を見ても、ほとんどのV2Hが5年に対しトライブリッドが10~15年の無償保証を出しています。
最近は各メーカーが軒並みトライブリッドに力を入れているのも、市場としてV2H単体よりもトライブリッドを後押しする動きがあるためです。
ただし、トライブリッドもV2Hもしっかりと比較することが必要です。複数の販売会社や工事会社で比較するのは当然ですが、停電時の操作などが機器によって大きく異なります。今回主に紹介したニチコンのV2Hにはない機能を、他のメーカーの機器が備えているケースもあります。例えば、パナソニックは充放電を同時に行える「eneplat」というシリーズを売り出していますし、2024年春からはシャープがV2Hの販売を開始してトライブリッド市場に参入します。各メーカーが続々と新商品を出しているので、しっかり比較検討が必要です。
また、他にも注意する点として、設置している太陽光発電によってメーカー保証が無効になったりするケースがあります。
検討している方の中には、V2Hやトライブリッドの性能や価格を比較しながら、どれにしようかワクワクと楽しめる方もいると思います。
しかし、ご自宅を購入された時のように、高価な機器を検討するというのは労力がかかって大変なものです。太陽光発電との保証の兼ね合いなんてところまで考えてられないという方や、自宅はどのサイズの機器なら設置できるかわからないという方がいて当然です。
なので、地元で安心できる工事会社からどんな商品が良いか提案して欲しいという方は、是非ソーラーパートナーズにご相談ください。
厳選した地元の会社の中から、自宅の状況に合わせた会社をご紹介させていただきます。