京セラは「2019年チャンス」で蓄電池市場を切り開く
蓄電池は補助金が支給されれば起爆剤になる
中村:
太陽光発電単体の補助金は平成25年を最後に現在まで支給されておらず、今後も再開されることはなさそうです。
しかし蓄電池に関しては、結果的に支給はなくなってしまったものの、今年度は予算案の段階では補助金が支給される予定でしたよね。
来年度(2019年度)以降の支給があっても不思議ではない状況ですね。
戸成氏:
来年度(2019年度)以降どうなるのかはわかりませんが、蓄電池については、今後有効な補助制度が始まれば普及の起爆剤になることは間違いないと思います。
国が十分な予算を組んでくれさえすれば年間10万台の市場をつくることは難しくないというのが私の考えです。
太陽光発電の電気を自家消費するということはもちろん、国も期待しているVPP事業においても蓄電池は欠かせない製品です。
2020年時点で9万円/kWhまで価格を下げるという目標を国は提示していますが、目標通り価格低減を実現するために思い切った支援を期待したいですね。
2019年問題ではなく「2019年チャンス」
中村:
蓄電池は世界市場においても日本が存在感を出せる分野だと思いますので、国のバックアップには大いに期待しています。
また、蓄電池は2019年問題対策としても注目が集まっていますよね。
戸成氏:
2019年問題は「問題」という名前が浸透してしまっていますが、蓄電池の導入が進む絶好の機会ということを考えれば、「2019年チャンス」とも言えます。
太陽光発電に対して否定的な意見を持っている方は、その理由として「太陽光発電は天候に左右される電源だから、系統に電気を流すことによって需給バランスが不安定になる」とよく言いますよね。
しかし蓄電池の導入が進み、太陽光発電で作った電気が自家消費されるようになれば、系統に電気を流さないわけですので需給バランスには影響を与えることもありません。
太陽光発電が今以上に世間にとって価値あるものになるために蓄電池の存在は欠かせません。
このチャンスを生かし、一気に蓄電池の普及につなげたいですね。
VPPも視野に大容量の蓄電池を用意
中村:
御社は家庭用蓄電池の業界をリードするメーカーという印象がありますが、引き続き蓄電池にも力をいれていくということでいいですよね。
戸成氏:
太陽光発電は蓄電池と組み合わせることがスタンダードになっていくのは間違いないでしょう。
当然京セラも蓄電池には力をいれていくつもりです。
中村:
御社の現在の蓄電池のラインアップは3.2kWh、6.5kWh、12.0kWhの3種類ですが、ラインアップに12.0kWhの大容量蓄電池を用意した狙いをお聞かせいただけますか。
戸成氏:
大容量の蓄電池を用意したのは、充電容量を増やすことで災害時の備えとして万全になるということはもちろん、VPP方面の引き合いも視野に入れているという理由もあります。
蓄電池が大容量であるということはつまり、それだけ電気の需給調整機能があるということです。
VPP事業において各家庭の発電設備の統合、管理を行うリソースアグリゲーターの立場からすると、蓄電池容量は10kWh以上が望ましいと考えられています。
弊社の大容量蓄電池は12.0kWhですので、この条件を満たしています。
また、弊社もVPPのリソースアグリゲーターとして登録しており、VPPの実証事業には積極的に関わっていくつもりです。
VPPとは
VPPとは「バーチャルパワープラント:Virtual Power Plant」の略で、日本語で直訳すると「仮想発電所」のことです。
VPPは発電所とは言っても、火力発電や原子力発電のような一つの大規模な発電所というわけではありません。
太陽光発電や風力発電、燃料電池、蓄電池などの比較的小さなエネルギー源をいくつもとりまとめて、まるで一つの発電所のように制御する「仮想の」発電所です。