再生可能エネルギー(太陽光発電)買取制度見直しってホント!?

太陽光発電などの再生可能エネルギー買取制度が見直しというニュース
先週、各メディアで『太陽光発電などの再生可能エネルギーの買取制度の見直し議論開始』というようなニュースが流れました。
当然それを見たご検討者の方からたくさんご質問を頂きました。
最初は私も「馬鹿らしい」とわざわざコラムに書くつもりもなかったのですが、テレビがこのニュースを取り上げてから相談が多すぎるので仕方なく書くことにしました。
当然このニュースを見た方はこの『買取制度の見直し』という言葉を見て不安になります。
買取制度が終わってしまったり急に変わってしまうのかという不安です。
結論から言いますと、ご不安に感じるようなニュアンスの『買取制度の見直し』は実際には何も始まっていません。
釣り記事なのか記者の方の思いが入るのか
私達が一番最初にこの内容の記事を確認したのが、一般社団法人日本電気協会が発行している電気新聞の6月11日の記事で「再エネ普及策、抜本的見直し-エネ庁、新エネ小委で検討へ」というタイトルでした。
再エネ普及策、抜本的見直し-エネ庁、新エネ小委で検討へ
2014/6/11
経済産業省・資源エネルギー庁は再生可能エネルギーの普及拡大策について、FIT(再生可能エネルギー固定価格買取制度)の見直しも含めた総合的な検討に近く着手する。検討の場は、総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)新エネルギー小委員会(委員長=山地憲治・地球環境産業技術研究機構理事・研究所長)。発電した電気を供給するための送電線網の増強方法や、FIT賦課金の抑制策などが主な検討課題に挙がりそうだ。
その2日後の13日(金)に産経新聞が「再生エネ買い取り制度見直し着手 経産省、利用者の負担軽減へ月内にも検討開始」というタイトルで記事を出しました。
再生エネ買い取り制度見直し着手 経産省、利用者の負担軽減へ月内にも検討開始
2014/6/13
太陽光や風力など再生可能エネルギーで発電した電力の買い取りを大手電力会社に義務づけた「固定価格買い取り制度」の見直しに経済産業省が近く着手することが12日、分かった。買い取り制度を含む再生エネ普及策のあり方について、今月中にも有識者委員会で議論を始める。買い取り制度が電気料金上昇につながるとの懸念が強いため、買い取り量に上限を設けるなど利用者の負担緩和策について検討を進める。(中略)
電力コスト上昇を懸念する経済界を中心に制度見直しを求める声が強まっており、今月10日の産業競争力会議で示された新成長戦略の骨子案にも「固定価格買い取り制度の見直し」が掲げられた。
有識者委では、再生エネの買い取り量に上限を設ける案などが検討される見通し。ただ、4月に閣議決定されたエネルギー基本計画では再生エネ導入を「積極的に推進する」との方針を示しており、普及と負担増のバランスをどうとっていくかが課題になる。
そして翌週、一気に他新聞、テレビへと波及していきました。
すべからくタイトルは、「再生可能エネルギー買取制度見直しへ」です。
でも記事内容や、ニュースの内容を詳しく見聞きすると実はそんな内容ではないのです。
今の時代、世の中にあふれているニュースを全部見る事はできません。
タイトルだけ見て情報を仕入れている事もたくさんあります。
実際の内容とタイトルが違うというのはやはりこの情報氾濫社会ではあってはいけない事であると思います。
実際に再生可能エネルギー買取制度について何が話し合われたのか?
では見直しと言われた6月17日に開かれた会合は何なのかという事ですが、正式名称は物凄く長い名前です。
『経済産業省の総合資源エネルギー調査会の省エネルギー・新エネルギー分科会の新エネルギー小委員会』です。
そしてこの新エネルギー小委員会がなぜ開かれたのか書かれた資料があります。
そこには以下の通りに書かれています。
新エネルギー小委員会の設置について
本年4月11日、第4次「エネルギー基本計画」が閣議決定された。再生可能エネルギー特別措置法の附則第10条に基づき、変更後の「エネルギー基本計画」の内容を踏まえ、再生可能エネルギー施策の総点検と必要な追加施策の検証を実施する必要がある。
(中略)
エネルギー基本計画において示された再生可能エネルギーに関する方針を具体化すべく、必要な措置の在り方について検討する。
つまりエネルギー基本計画で決まった内容を実行するための具体的なやり方を考えていきましょうという委員会です。
見直しではなく、前向きな議論です。
新エネルギー小委員会の今後の検討事項について
そしてこの小委員会で配布された別の資料では、以下のように書かれています。
今後の検討について|資料3 再生可能エネルギーをめぐる現状と課題
- これまでのエネルギー基本計画が示した水準(電源構成比の約2割)を更に上回る水準の再生可能エネルギーの導入を目指す」ことが、本年4月に「エネルギー基本計画」で閣議決定されたことを踏まえ、まずは、再生可能エネルギー電源ごとの導入状況を踏まえた上記水準の達成可能性の検証、想定される国民負担の規模感の把握等シミュレーションを実施し、本小委員会に報告する。また、シミュレーション実施に先立ち、委員による視察団を組成し、買取制度先進国である欧州の実
情等について直接調査を行い、成功事例・失敗事例や教訓を踏まえた検討を行う。- その上で、エネルギー基本計画において明示されたように、「再生可能エネルギー源の最大の利用の促進と国民負担の抑制を、最適な形で両立させるような施策の組み合わせを構築することとを軸として、法律に基づき、エネルギー基本計画改定に伴い総合的に検討し、その結果に基づいて必要な措置を講じる」こととする。
つまり、まずは現状把握し、その結果に基づいて必要な措置をとるということです。
エネルギー基本計画で示された電下構成比で約2割以上の再生可能エネルギー比率というのはそりゃあ簡単な事ではありません。
この点については以前コラムで書いていますのでご興味ありましたらご覧ください。
まとめ
冒頭でも書きましたが、みなさんが心配しているような現在の固定買取制度の見直しがあるという事ではありません。
ただエネルギー基本計画で示された目標は今の延長線上にはありません。
何かしらの策を講じていかなければ絶対に達成不可能な目標です。
総エネルギー量を少しでも減らすことも考えなければいけないので電気を創る創エネルギーだけでなく、省エネルギーにももっと取り組まなけばならないですし、いま急に動き出している蓄電地も普及しなければいけません。
他意があるのかないのかはわかりませんが、その気運をそぐようなマスコミの動きに腹が立った1週間でした。